TVアニメ『薬屋のひとりごと』第45話「蟇盆」は、第44話「砦」で猫猫が子の一族の本拠地へ連れてこられた後の物語です。
神美から「不老の薬を作れ」と命じられた猫猫。響迂は猫猫を逃がそうとしますが失敗し、神美の前へ引きずり出されます。
この記事では、「蟇盆」とは何なのか、猫猫がなぜ神美へ逆らったのか、響迂をかばった理由、翠苓・楼蘭の立場、そして火薬庫爆破までを整理します。
※第45話の結末を含む解説です。後の話の内容に触れる考察もあります。
第45話「蟇盆」のあらすじ
砦に囚われた猫猫は、神美の命令で不老の薬を作らされています。
しかし、当然ながら神美が望む「永遠に若く生きる薬」を簡単に作れるわけではありません。
猫猫は時間を稼ぎながら、砦の内部、人間関係、火薬工房、子の一族の動きを観察していました。
そんな中、響迂が猫猫を逃がそうと計画を実行します。
ところが、すぐ見張りに見つかってしまいます。
翠苓が現れ、なんとか穏便に済ませようとしますが、そこへ神美が登場。神美は猫猫、響迂、翠苓、見張り役のうち「誰を痛めつけるか」を楽しむような態度を見せます。
その姿を見た猫猫は、自分が響迂へ脱出を頼んだと罪をかぶり、神美へ決定的な一言をぶつけます。
同じ危機に対する四人の守り方
本文の出来事と、その意味の読み取りを分けて整理しました。人物の心情・意図については考察を含みます。
| 人物 | その場で取る行動 | 制約 |
|---|---|---|
| 響迂 | 猫猫を逃がそうとする | 子ども一人で警備を破るのは難しい |
| 翠苓 | 争いを小さくしようと仲裁する | 神美の支配に強く逆らえない |
| 猫猫 | 自分へ矛先を向けさせる | 自分の安全と引き換えになる |
| 楼蘭 | 母の命令の形を利用する | 本心を表に出せない |
「蟇盆(たいぼん)」とは?|毒蛇や毒虫を使う恐ろしい刑
第45話タイトルの「蟇盆」は、作中では毒蛇や毒虫などがいる場所へ人間を放り込み、苦しませる拷問として描かれます。
一般には、中国の伝承などで語られる「蠆盆(たいぼん)」を連想させる刑です。
毒を持つ生き物がいる場所へ罪人を入れるという極端な刑罰で、神美の残虐性を一目で理解させる装置として使われています。
なお、アニメ公式の第45話タイトル表記は「蟇盆」です。関連解説では「蠆盆」と表記される場合もありますが、本記事では公式タイトルに合わせます。
神美はなぜ「不老の薬」を欲しがる?
神美は猫猫の薬師としての能力を利用し、不老の薬を作らせています。
しかし猫猫からすれば、神美が求めるものは現実的な薬ではありません。
神美が執着するのは、年齢、美しさ、支配力を失うことへの恐れです。
若さを保つ薬への執着は、単なる健康願望ではなく、「自分が中心であり続けたい」という神美の支配欲と重なっています。
第44〜45話では、神美が楼蘭や翠苓を一人の人間として見るより、「自分の意志に従う存在」として扱っていることが繰り返し描かれます。
響迂はなぜ猫猫を逃がそうとした?
響迂は狐の里で猫猫と知り合って以降、かなり強く猫猫を慕っています。
猫猫が砦へ連れてこられ、自由を奪われていることも理解していました。
だからこそ、子どもながら自分がおとりになって猫猫を逃がそうとします。
作戦自体はすぐ見破られますが、響迂の行動は第45話の猫猫の判断へ直接つながります。
猫猫は「この子が自分のために動いたせいで拷問される」という展開だけは許せませんでした。
猫猫はなぜ響迂の罪をかぶった?|猫猫の正義感が出る場面
神美が響迂を痛めつけようとした瞬間、猫猫は「自分が頼んだ」と前へ出ます。
猫猫は普段、損得勘定が速く、危険な相手へ無意味に逆らうタイプではありません。
その猫猫が、自分から神美の標的になる。
公式イベントで猫猫役・悠木碧さんも、第45話について、弱い立場の響迂へ矛先を向ける神美を猫猫の正義感が許さなかったと振り返っています。
第4話で梨花妃の侍女を叱りつけた時と同じく、猫猫は「自分より弱い相手が理不尽に傷つけられる」場面では、普段の冷静さを越えて動きます。
「くそばばあ」の一言|猫猫が神美へ本気で怒った瞬間
猫猫は神美を本能的に危険な人物だと理解しています。
下手に刺激すれば何をされるか分からない。
それでも神美が、響迂・翠苓・見張り役まで含めて「誰を痛めつけようか」と楽しむ姿を見て、猫猫は我慢できなくなります。
そして神美へ、短く強烈な悪態を吐きます。
その結果、神美の怒りは猫猫へ集中。
猫猫は拷問部屋へ送られることになります。
楼蘭はなぜ「蟇盆」を提案した?
神美が猫猫への拷問を決めた時、楼蘭側から「蟇盆」という案が出ます。
一見すると、猫猫をひどい目に遭わせる提案に見えます。
しかし楼蘭は、猫猫が普通の人間とは違って、毒蛇や毒虫へ強い興味を持ち、毒の知識にも長けていることを知っています。
そのため、他の拷問より猫猫が生き残りやすいものを選んだ可能性が考えられます。
結果的に猫猫は、神美が期待したような恐怖反応を見せません。
猫猫は蟇盆をどう切り抜けた?|拷問が「食材探し」に変わる
普通の人なら、毒蛇や虫がいる地下へ落とされた時点でパニックになってもおかしくありません。
ところが猫猫は、恐怖より先に「何がいるか」を観察します。
見張りが様子を見に来ると、猫猫は簪を使って蛇を処理し、火で焼いて食べていました。
神美が「恐怖を与えるため」に用意した拷問が、猫猫にとっては「珍しい生き物を観察できる環境」に変わってしまったわけです。
ここは猫猫の毒耐性だけでなく、未知のものを恐怖ではなく知識へ変換する性格が最も極端に表れた場面です。
翠苓はなぜ猫猫を助けようとする?
翠苓はこれまで猫猫を事件へ巻き込み、敵側にいる人物として描かれてきました。
しかし第45話では、猫猫や響迂が神美の犠牲になるのを避けようとします。
翠苓自身も神美の支配下で育ち、暴力と恐怖を知っています。
だから神美の前で完全に逆らうことは難しい。
それでも、被害を小さくしようと動く。
第45話では、翠苓が単純な悪役ではなく、支配されながらも守ろうとする側であることがより明確になります。
楼蘭=子翠の過去|神美に愛された娘ではなかった
砦の中では、楼蘭が神美の娘として特別扱いされているように見えます。
しかし楼蘭の過去を知ると、その関係は「母娘の愛情」とはかなり違います。
楼蘭は、神美が先帝への復讐や執着を背負わせるために生んだ存在として扱われてきました。
派手な化粧や衣装をまとった「楼蘭」という姿をしている時だけ娘として認識され、素顔の時には自分の娘としてまともに見てもらえない。
だから楼蘭にとって、後宮で虫を追い、小蘭や猫猫と笑っていた「子翠」の時間は、作り物ではなく自分で選んだ人格と生活だったと考えると分かりやすいです。
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猫猫が「子翠」と呼んだ意味
楼蘭の過去を知った猫猫は、目の前の彼女を「楼蘭妃」と呼ぶのではなく、迷った末に子翠と呼びます。
これは身分を無視した呼び方です。
でも楼蘭にとっては、自分が本当に楽しく過ごしていた時の名前。
猫猫に「子翠」と呼ばれた時、彼女が見せる表情が第45話でもっとも切ない場面の一つです。
楼蘭はなぜ火薬庫へ火を放った?|子の一族を内側から終わらせるため
地下の火薬工房には、多くの者が働かされていました。
楼蘭は彼らへ金を渡し、その場から逃がします。
そして、自ら火薬へ火を入れます。
これは単なる破壊行動ではありません。
子の一族が禁軍へ抵抗するために使う武器・火薬を、自分たちの手で使えなくする。
つまり楼蘭は、反乱側の戦力を内部から削ぎ、自分の一族の暴走を止めようとしていると読めます。
第46話冒頭で砦が炎に包まれているのは、この楼蘭の決断の結果です。
響迂たち子どもは死んだ?|「毒」ではなく「薬」と言った意味
第45話終盤、猫猫は動かなくなった響迂たち子どもを目にします。
楼蘭は自分が薬を飲ませたと語ります。
猫猫は当然怒ります。
ただし『薬屋のひとりごと』では、第20話で翠苓が死んだように見せる薬を使った前例があります。
そのため、「本当に子どもを殺したのか」「別の意図があるのか」は、この時点ではまだ確定しません。
第45話は、視聴者にも猫猫にも最悪の想像をさせたところで終盤へ入ります。
神美と楼蘭の対比|支配する母と、自分で終わらせる娘
神美は人を自分の思いどおりに動かすことで満足します。
楼蘭はその支配の中で育てられました。
しかし第45話の楼蘭は、母の計画を継ぐのではなく、自分の判断で火薬工房を潰し、子どもたちの未来まで考えます。
「楼蘭」は神美が作った娘。
「子翠」は楼蘭が自分で選んだ生き方。
第45話は、その二つが完全に分かれ始める回です。
第45話は原作小説の何巻?
アニメ第45話は、原作小説(ヒーロー文庫)第4巻のクライマックス部分が中心です。
第41話から始まった猫猫失踪・子の一族編が、ここから決戦へ入ります。
第45話の感想|猫猫が一番「主人公」に見える回
猫猫は普段、正義を振りかざす主人公ではありません。
面倒事は嫌いだし、自分が得をしないなら深入りもしない。
でも響迂が理不尽に傷つけられそうになると、自分から前へ出る。
公式イベントでも、悠木碧さんがこの場面を「ヒロインというよりヒーローのよう」と振り返っていました。
個人的にも、第45話の猫猫はかなり主人公らしい。
しかも蟇盆に入れられた後は、神美が作った恐怖そのものを無効化してしまう。
猫猫の強さは腕力ではなく、知識と好奇心と「理不尽だけは許さない」という芯にあるとよく分かる回でした。
次回第46話「禁軍」へ
楼蘭が火を放った砦へ、帝直属の禁軍が迫ります。
そして禁軍を率いるのは、紫紺の甲冑をまとった壬氏。
続きは第46話「禁軍」のネタバレ解説へ。
参考:アニメ公式 第45話「蟇盆」(あらすじ)/アニメ公式:第2期Blu-ray発売記念イベントレポート。話数・タイトルと導入は公式あらすじを参照しています。公式ページは結末の全説明ではありません。比較表の読み解きや、人物の心情・演出の意味は本記事の考察です。
動画でも、余韻の続きを。
薬屋のひとりごとの魅力を、動画でも語っています。
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